Mar 3, 2021

特集|現場トーク 医療現場で働くということ

庄内地域屈指の規模・機能を誇る、
日本海総合病院。
最前線で現場を支える4名に
看護師・臨床工学技士という仕事について語ってもらった。

日本海総合病院のみなさん

(写真右から)

佐藤 龍飛 (さとう・たつたか)さん

臨床工学技士/2010年入職/酒田市出身・在住 30代

工業高校卒業後、仙台の専門学校へ進学。福島県の病院で5年間勤務した後、Uターンし現職。

渡邊 大和(わたなべ・やまと)さん

臨床工学技士/2013年入職/秋田県にかほ市出身・酒田市在住 30代

高校卒業後、地元にかほ市の企業に就職。4年間の勤務を経て、新潟県の専門学校に進学し現職。

佐藤 つばさ(さとう・つばさ)さん

看護師/2017年入職/酒田市出身・在住 20代

高校卒業後、千葉県の専門学校へ進学し、神奈川県の病院に専属の救急救命士として2年間勤務。その後、同系列病院で派遣職員として勤務しながら看護学校に通い資格を取得、Uターンし現職。

三上 友紀恵(みかみ・ゆきえ)さん

看護師/2018年入職/庄内町出身・在住 30代

高校卒業後に看護の道を志し、地元企業を1ヶ月で退社、翌年埼玉県の看護学校へ進学。同県の病院に3年半勤務後、Uターンし現職。

きっかけと経緯

友紀恵 母も看護師をしていて、小さい頃から勧められていたけどあまり興味が持てず、高校卒業後は販売職として就職しました。接客がしたくて選んだのに、意外とお客さんと接する時間が少なくて、もっと人と関われる仕事はないかと考えたときに、看護師という選択肢が思い浮かんだんです。
龍飛 仕事における人との関わりが動機だったんですね。
大和 私も母が看護師で異業種からの転職という点は同じですが、この仕事を選んだのは手に職をつけたかったからです。リーマンショックの影響で当時勤めていた会社が規模を縮小し、新しい仕事を見つける必要があって。臨床工学技士という仕事があることは、母に相談して初めて知りましたね。
つばさ 私は小さい頃から、仮面ライダーとかウルトラマンとかヒーローが大好きで。ピンチの人を助ける仕事がしたいと思い、この世界に入りました。
大和 なるほど。はじめに救急救命士を選んだのは、そういう理由からだったんですね。
つばさ そうなんです。

龍飛 人を助ける仕事がしたい、という部分は私も同じですね。と言っても昔のことではっきり覚えていないんですが、一緒に住んでいた祖父母が病気になったときに、「将来は病院で働きたい」みたいなことを言っていたらしくって。でも、中学校でロボットに興味が出てきて工業高校に進学しちゃうんです。
つばさ 遠ざかりましたね。
龍飛 そうなんです。でも、ロボット熱は結局そこまでのものにはならず、ゼロから進路を考えていたときに思い浮かんだのが医療分野だったんですよね。で、臨床工学技士という仕事を知って、工学系の知識も活かせるしいいなと思って。
友紀恵 私もそうですが、小さい頃の記憶って残っているものなんですね。

仕事とやりがい

つばさ 私たち病棟看護師の仕事は、オムツや点滴の交換、採血、内服薬の準備など、端的に言うと「入院患者さんの身のまわりのお世話」ということになりますかね。
友紀恵 そうですね。あとは、入院時の情報収集、退院時のご家族やケアマネージャーなどとの調整というのも基本となる仕事ですね。

龍飛 それにプラスして、診療科ごとの仕事がある感じですよね?
つばさ はい。今私が所属している呼吸器外科病棟では、肺から空気を抜いたり、血液や膿を出したりするドレーンの状態や、抗がん剤の副作用がないかのチェックなどがあります。分野や科が多く、それぞれに違うことを覚える必要があるのは、おもしろさであり難しさでもありますね。
大和 友紀恵さんは、やりがいとかおもしろさ、どんなときに感じますか?
友紀恵 ありきたりかもしれないけど、自分の援助や声がけで患者さんがポジティブになれたときですね。
大和 患者さんへの声がけで、気をつけていることってあったりします?
友紀恵 疑問形で話しかけることで、患者さんがたくさん喋れる空気をつくることですかね。感じ方や考え方は十人十色なので、断定的な口調にならないように特に気をつけています。
龍飛 患者さんと接する時間が一番長い、看護師さんならではの細やかな気遣いがありそうですね。
大和 機械操作が仕事の中心とは言え、臨床工学技士も見習わないといけませんね。透析による血液浄化など、患者さんとのコミュニケーションが必要な業務もありますし。
龍飛 血液浄化は、患者さんの身体的な負担も小さくないし、少しでも楽になるような声がけができたらいいですよね。
友紀恵 透析に使うもの以外には、どんな機械があるんですか?
龍飛 臨床工学技士が扱う機械は本当にたくさんありますが、分野で言うと「循環」「呼吸」「代謝」と大きく3つに分かれています。大和さんが担当している血液浄化は「代謝」の分野ですね。私が現在メインで担当している「循環」は、心臓血管外科や循環器内科の治療に関わる分野です。
つばさ 手術の中で機械を操作することもある分野ですよね。
龍飛 心臓手術での人工心肺装置の操作は学生の頃からの憧れでもあり、大きなやりがいを感じられる仕事です。一時的に止まっている患者さんの心臓の代わりになる装置なので緊張も大きいですが、飛び交う指示に耳を傾けながら、血液をいい状態に仕上げられるよう操作・モニタリングに集中し、チームで手術を進めていくことのやりがい、無事手術が終わったときの達成感は何ものにも代えがたいですね。

友紀恵 大和さんは、臨床工学技士のどんなところにやりがいを感じていますか?
大和 医療機器のメンテナンスや、他職種の方も使用する機械の勉強会も担当していて、病院全体の医療をより円滑に進めるための力になれていることにやりがいを感じています。

コロナ禍での変化

大和 いつでも医療機器を万全の状態にしておくことは平常時でも変わらず、私の業務ではあまり大きな変化がないというのが正直なところですが、みなさんどうですか?
龍飛 入院規制や外来規制など、どちらかと言うと患者さんやご家族への影響の方が大きい感じがしますよね。
友紀恵 面会が制限されていることは、やっぱり患者さんやご家族にとって大きなストレスになっているように感じます。ご家族には荷物の受け渡しの際に、患者さんの状態をできるだけ丁寧に細かくお伝えするように努めていますが、話だけではどうしても伝わらない部分が出てきてしまい悩ましいですよね。
つばさ 手指消毒やマスクの着用などの予防策が、社会に浸透してきたのはいい傾向ですよね。
龍飛 私たち医療従事者が徹底していくことで、万全の医療体制の維持だけでなく、予防意識の浸透にも貢献し、地域社会の健康と安心を守っていきたいですね。

今後の展望

友紀恵 外来業務での経験も積みたいと考えています。外来の患者さんは、普段の生活の流れの中で通院されている分、うまくサポートしていくには、外来の短時間のやりとりの中でより深くライフスタイルを理解することが求められると思っていて。そのような経験を重ね、さまざまな患者さんにしっかりと寄りそうことができる看護師を目指していきたいですね。
つばさ 昨年、災害などで要請があった際に現地に赴いて活動するDMATの資格を取得しました。今後もさまざまな資格を取得して看護師として貢献できるフィールドを広げていきたいと考えています。
大和 私も、定期的に資格を取得することを目標にしています。日々の業務をベースに着実なスキルアップを図っていきたいですね。

龍飛 業務で得た知見を発表し合う学術大会というものが臨床工学技士の世界にもあって、そこで発表したことがきっかけで、医療機器の開発に携わらせていただいたことがあります。自分の考えやアドバイスが機器として具体化され、たくさんの医療現場で使っていただけることに、普段の業務とはまた違った大きなやりがいを感じました。今後も積極的に発表を続けることで、医療機器開発にも貢献していけたらなと思っています。

これから社会に出るみなさんへ

学校の勉強が得意なだけでは、医療の仕事は務まりません。本当に必要なのは、興味を持ったことを突き詰められるかどうか。少しでも気になったら、いつでも気軽に見学に来てください。

一発で自分にぴったりの仕事に就くのは、簡単なことではないので、深刻に考え過ぎないでくださいね。違うなと感じたら、また探せばいいだけですから。

悩むというのは、自分と向き合うこと。だからたくさん悩んでほしいです。結果が出たら、どんな道でも自分らしさを大切に歩んで行ってください。

さまざまなことに触れ、興味を持った分野に進んでほしいです。いろんな人の声を聞いて迷ったら、自分の気持ちに正直に進んで行ってくださいね。

日本海総合病院