Mar 2, 2018

ワクワクが導いた天職で、世界を目指す。

 

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株式会社オリーブ 代表取締役

橋本 道春

 

▼高校卒業後の歩み

《1年目~》

地元の機械加工会社に入社。ほどなくして、ミュージシャンになるため上京。

《2年目~》

地元に戻り、大型トラックの運転手に。首都圏と行き来する日々を送る。

《3年目~》

結婚を機に、遊佐町へ移住。機械加工会社で働く。

《7年目~》

趣味で映像制作を開始。少しずつ依頼が来るようになる。

《10年目~》

仕事として映像制作を開始。

 

 

橋本道春さんは、福島県石川郡古殿町の生まれ。工業高校を卒業した後、地元の機械加工の会社に勤めたが、現在は遊佐町に暮らし、酒田市で映像制作の会社を経営している。「迷ったら楽しそうな方、ワクワクする方を選び、やりたいことをすべてやってきた結果」と橋本さんは言う。

高校時代、音楽にのめり込んでいたという橋本さん。働きはじめてもその気持ちは変わらず、入社後ほどなくしてミュージシャンになるために上京する。「福島で『うまいね』と言われるくらいのレベルでは、東京では通用しないことを知りました」。1年ほど暮らし地元へ帰ることになるのだが、この経験で橋本さんは別の特技に気がついたそうだ。「音楽だけではもちろん食べていけなかったので、いろんなバイトをしたんですけど、ネット回線の営業の仕事で結構いい成績を上げたんです」。

地元でトラック運転手を経験した後、結婚を機に遊佐町へと移住。再び機械加工の会社で働きはじめた橋本さんは、その道を極め起業しようと片っ端から難しい機械の操作にチャレンジした。「残念なことに、全然向いてませんでした。自分は0スタートで、がんばってがんばってやっと10まで行くところを、最初から5くらいできて簡単に10のはるか上に行ってしまう人が、いっぱいいることがわかりました」。

そんな橋本さんに転機をもたらしたのは、出席した結婚式で目にした1本のプロフィールムービーだった。「義妹が友だちと一緒に映像をつくって、余興で流したんです。ちょうど、一般家庭でも手軽に映像編集ができるようになってきていた頃で。単純に『俺もつくってみたい』って思ったんですよね」。はじめてつくった映像が流れたのは、地元福島の友人の結婚式でのこと。以来、機械加工の仕事をしながら趣味として映像制作を続けるうちに、結婚式のプロフィールムービーの依頼がぽつぽつと舞い込むようになったそうだ。「はじめはスライドショーのような簡単なものだったんですけど、すごく喜んでもらえて。それが嬉しかったんですよね。子どもの頃から運動も勉強も全然できなかったから、自分にとってはそれが初めての成功体験で。褒めてもらえることがとにかく嬉しかったんです」。もっと本格的に映像のことを学びたい。そう思い会社を探したが、当時酒田には映像制作の会社がなかったという。それならばと橋本さん、会社を辞め個人事業主として映像制作活動を開始する。

 

かつての夢が支えた、映像制作への想い。

 

意気揚々とスタートしたが、現実はそう甘くない。独立後1年ほどは、映像制作だけで仕事が成り立っていたわけではなかった。「映像の仕事もしていましたが、やっぱり波があるんですよね。写真を勉強したいと思って地元のカメラ屋さんで働いたりもしましたけど、映像の仕事が集中してしまうとそれだけで手一杯になっちゃって。で、辞めたら映像の仕事も減っちゃう、みたいな感じでしたね」。そんな橋本さんの窮地を救ったのが、東京時代に気がついた自身の営業スキルだった。「バイトしたくて面接に行ったら、正社員にされちゃったんです。『がんばれば、3ヶ月でマネージャーになれる人もいるから』とか言われて。でも、映像でそこまで稼げてなかったからがんばってやったら、割とすぐマネージャーになれちゃって。映像の仕事が増えてきて辞めようと思ったときにも『来れるときだけでいいから』って言ってもらって、映像をつくりながらしばらく働かせてもらいました。正式に辞めた後も継続的にお仕事いただいていて、本当に感謝しかないですね」。

 

 

目標は世界。庄内から、最高の映画を。

 

法人を立ち上げ、2017年10月で丸6年。順調に成長を続け、現在は総勢10名のスタッフでウエディングムービーやテレビCM、ミュージックビデオ、地域のプロモーションムービーなどさまざまな映像を制作している。「ここまでうまくやってこれたのは、庄内だからというのもあると思っています」と橋本さんは言う。「もちろん自信を持って出せるものを一生懸命つくってきていますが、競合が多い首都圏で同じ結果を出せたかというと、正直わかりません。暮らす場所としてはもちろんですが、新しいことを仕事にしたい人にとっては、庄内は仕事面でもおすすめです」。メンバーの1人として携わる「あきんどなまか」(*1)の活動には、そんな想いも込められているのだろう。

最近は、映画制作にも精力的に取り組んでいる。2017年秋に行われた第13回山形国際ムービーフェスティバルでは、橋本さんが監督した「作りたての家族」がベスト10に入選。起業時に掲げた目標「映画で世界へ」に、着実に歩を進めている。「世界中の映画祭で喝采を浴びるような映画、必ずつくりますから」。眼光鋭く言った後、橋本さんはまたいつものように無邪気に笑った。

 

*1 あきんどなまか

橋本さん含む3名の若手経営者が運営する、一般社団法人。2013年より、高校生向けの職業体験プログラム「WAKUWAKUWORK」を継続的に開催し、地域の企業や行政組織とともに庄内で働くことについて伝えることに取り組む。5年目となる2017年に「輝けやまがた若者大賞」を受賞。