Mar 3, 2021

喜びも、大変さも、 ともに味わえる交わりを。

三川町子育て支援センター(庄内アソビバプロジェクト)

町野 聡美(まちの・さとみ)さん

宮城県石巻市出身/三川町在住 30代

▼高校卒業後の歩み


・1年目〜
仙台市の短大に進学し、保育を学ぶ。

・3年目〜
自らも通った石巻市の幼稚園に教諭として就職。

・8年目〜
結婚を機に、三川町に移住。出産に伴う休みを挟みながらも、一貫して子どもと関わる仕事に従事。

・14年目〜
子育てサークル「スマイルキッズ」を立ち上げ活動開始。

・17年目〜
三川町子育て支援センターに立ち上げから携わり、支援員として忙しくも充実した毎日を過ごしている。

 「地域密着で暮らしを支える仕事ができていることに、大きな喜びを感じています」。

 2020年7月オープンの三川町子育て交流施設「テオトル」にある、子育て支援センターの仕事について、町野聡美さんはこう話す。仕事は大きく3つ、大きな屋内遊具などで遊ぶ子どもたちと一緒に過ごす「広場の運営」、子育てに関する悩みを聞き解決に導く「相談支援」、一時預かりなどの「子育てサポート」だ。幼稚園教諭や他施設の子育て支援員など、一貫して子どもと関わる仕事に就いてきた町野さんが考えるこの仕事の最大の特徴は、保護者と深く関われることだという。「基本的に子どもたちは、保護者と一緒に来館します。子どもたちが楽しく過ごせることはもちろん大事なんですが、私たちが遊び相手になることで保護者がゆっくりできたり、気軽に悩みを相談できたり、一息つける場所であることが重要だと思っていて。『リフレッシュできた』『相談しやすいからまた来た』と言って通っていただけるのが、何よりの喜びですね」。

誰かに話してみることで、課題は楽しく解決できる。

 子育て世代の力になりたい。町野さんの思いの強さが発揮されるのは、仕事においてだけではない。2017年に立ち上げた子育てサークル「スマイルキッズ」もその1つだ。きっかけは、同じ子育て世代との何気ない会話からだった。「うちも4人子どもがいて何度も経験したんですが、赤ちゃんが生まれると上の子が遊びたい場所に一緒に連れて行くのが難しい、という『子育てあるある』があって。他の家庭はどうしているのか聞いてみたら、土日はショッピングモールで過ごすという答えが圧倒的に多かったんです。いろいろ気にせず子どもたちがもっと自由に遊べて、親たちも交流できる場があればいいねって話から、自分たちで遊び場をつくることにしたんです」。月1回、公民館を借りて自由に遊ぶことをベースに、バスを借りて遠足に出かけたり、講師を呼んで科学体験をしたり、さまざまな活動を展開してきた。メンバーは20家庭、総勢約70名にもなる。「平日に活動している子育てサークルはいくつかあるんですが、仕事をしていると参加が難しいですよね。そんな人たちが週末につながれる場になれていることは、とても嬉しいです。今はコロナでなかなか難しいですが、落ち着いたらまたみんなで集まりたいですね」。

 その2年後、2019年にはご主人とともに婚活団体を立ち上げたという町野さん。子育ては、結婚の先に待つ選択肢の1つではあるが、どのような気持ちからだったのだろう。「一番は、主人の影響で町の未来を考えるようになったこと。家業を継ぎ会社を経営している主人は、『どうすれば町を盛り上げられるか』といつも言っていて、いつからか私も一緒に考えるようになったんです。いい人と出会えれば参加者は嬉しいし、結婚して定住してくれれば町にもプラスになる婚活パーティーは、地域にとっていいことづくめだねって話になって」。カップル成立の確率アップを第一に考え、規模を小さくし、参加者の顔写真やプロフィールを公開して参加者を募ったところ、大成功だったという。「自分がやりたいことが、誰かのためにもなるのはやっぱり嬉しいですよね」と話す町野さん。参加者がお子さんを連れて子育て支援センターを訪れる日も、そう遠くはないかもしれない。

大切なのは、踏み出してからどれだけやれるか。

 子育てや地域社会を軸に、仕事で、プライベートで、思いを形にし続けている町野さん。その一歩目となった保育科への進学は、戸惑いながら踏み出したものだった。「高校3年生までは剣道一筋で、引退するまでは進路についてちゃんと考えていなくて。誰かの役に立てる仕事がしたい、という漠然とした思いを担任の先生に伝えたら、保育科への進学をすすめられたんです。ピアノも絵も得意だからいいかも、くらいの考えで進学し、はじめは人前に出るのも苦手でしたが、だんだん自分のアイデアを試すワクワクの方が大きくなってきて。今は、本当にこの仕事が楽しいですね。進路選択、悩みは尽きないと思いますが、確かなものではなくても興味がある方向に進めばきっと大丈夫です。その先で真剣に取り組めば、やりたいことが見えてきますから」。

 たくさんの新しい一歩が、元気に踏み出されることを願い、町野さんは大きく笑った。

三川町子育て支援センター