家業を継ぎ、地域で羽ばたく☆

母と一緒に、地域に寄り添う仕事を

　鈴木麻友さんのご自宅は、親子3代続く酒田市のバイク屋さん。お店に入るとバイクがずらりと並び、常連のお客様が整備をお願いするかたわらおしゃべり。

その奥の一角にある空間、保険相談窓口が麻友さんの仕事場です。高校を卒業し大学に進学した時の事、突然の事故により通院を繰り返し、学業もままならず自らの夢について考えていると、次第に子どもの頃から家族のように可愛がってくれたお客様の姿を思い出すようになりました。

お世話になってきたお客様の役に立つ仕事がしたいと考えていたところに転機が訪れます。これまでお母さんが立ち上げていた保険事業を学ぶため、東京で保険の仕事をしてみないかという誘いがあったのです。すぐに大学を中退し、東京へ。2年半多くの事を学び、再び地元に戻りました。

「保険業務と言っても営業をすることなく、これまでのお店との繋がりや紹介で来てくれる方が中心の来店型保険ショップです。結婚したり、子どもが出来たり、ライフスタイルが変わる時や、何か困りごとがあった時、ふと私の顔を思い出してもらえるのがうれしいですね。これからも一緒に笑ったり、泣いたり、もっとお客様に寄り添い、力になりたいです」。

バイクライフをトータルでサポートできるお店づくり

　23歳の時お父さんに誘われ、大型バイク「隼」の後ろに乗った時「私も乗りたい！」と感じ、再び人生の転機が訪れます。

小さな頃から当たり前にあったバイクという存在。いざ乗ってみると道端に咲く花、変化する空気の温度や重み、その土地・季節の香り、広がる景色と続く道、何もかもがこれまでとは全く違って感じ、すぐさま夢中になりました。「バイクの加速感や体に受ける風、全てが心に響いたのです」。

その後大型二輪免許を取得。自らが運転し、バイクと共に新たな世界を知りました。そしてお客様やツーリング仲間ともっと楽しみたいと、月に1度ツーリングの企画を立てるまでに。

行き先は東北全域はもちろん、北は北海道から南は群馬県の草津温泉までと遠方まで出かけることもあり、時にはプロのロードレース観戦を目的にツーリングを企画しています。

麻友さんがバイクに乗るようになってから、お店には女性のお客様が増えてきたそうです。「バイクに乗る時に着るバイクウェアや、バイクのメンテナンス、保険、女性ならではの視点で相談を受けています」。そこで新たに企画したのが女性だけで走る“お姫様ツーリング”。こちらも充実したツーリングになりました。

「庄内は海も山も峠もあり、全国のバイク乗りには憧れの場所なんです。実際に自分も乗るようになって、その魅力に引き込まれました」。

ここから夢を叶える力

麻友さんは最近、地元で知り合い友人になった人との会話に、たくさんの刺激を受けています。「県外に就職して技術を身に付けた方が地元に戻り、新たな仕事やイベントを立ち上げていますよね。ワクワクしながらそのお話を伺い、その人自身に魅力があるならば、夢を叶えるのは場所ではないのだと、実感しました」。

麻友さんが次なる夢として掲げているのがライダーズカフェの運営。「バイクのメンテナンスはもちろん、ライダーのファッションやバイクや保険も含めてトータルでサポートできるようなお店を目指したいですね」。

また、鈴木モータースの3代目として働く麻友さんの弟、貴大さん（1993年生まれ）は、二輪業界最高峰 全日本ロードレースのレーシングチーム、S-PULSE DREAM RACINGのメカニックとして年間契約を結び、現在酒田と全国のサーキット場を行き来しています。東北でメカニックは珍しく、またこの若さでの抜擢も、貴大さんの努力とその成果が認められてのこと。

「したいこと、望む景色の先に、地元の良さがきっと見えてくるはずです。だから、もしここを離れることがあっても、たくさんの人が自信をつけて帰ってきてほしいですね」。

オー、マイショウナイ！

鳥海ブルーライン（遊佐町）

バイク情報誌のアンケートで実施された絶景ロードの人気投票で、日本のトップ10に選ばれたほど、全国でも人気のスポット。ライダーにとって憧れの場所です。