Mar 9, 2018

特集|イナカのイナカに暮らす理由【前編】

酒田港から北西に39km、定期船で75分の位置にある山形県唯一の有人島、飛島。年々人口が減り続けるこの島に帰り、移り住み、いきいきと働き暮らす若者たちがいます。2013年の設立以来、観光を中心にさまざまな事業を展開する合同会社とびしまのみなさんに、島での暮らしについてお話を伺いました。

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(写真:合同会社とびしまのみなさん)

・合同会社とびしま

2013年3月創業。「カフェスペースしまかへ」の運営や、島内ツアーの企画運営など観光業を中心に、書籍編集や映像記録による「風景・歴史の保存」から、パッケージデザインも含めた加工品開発、水道管理や除雪まで、さまざまな事業を行なっている。創業当初は2名の島出身者と2名の移住者でスタートしたが、その後同年代の移住者が仲間に加わり、現在社員は8名。「20年後には社員60名、いずれは自治体のような存在に」を目標に、今後は宿泊施設運営や漁業にも取り組んでいく予定。2017年に「輝けやまがた若者大賞」を受賞。

 

 

Uターン者が語る やっぱり地元が好きらしい。

仕事、暮らし、さまざまな経験をし地元庄内で生きることを選んだ3名に、今までのこと、これからのことを語り合っていただきました。

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〈左:本間 当(ほんま・あたる)さん 中央:三浦 由人(みうら・なおと)さん 右:渡部 陽子(わたなべ・ようこ)さん〉

 

▼プロフィール

・本間 当(ほんま・あたる)さん

飛島出身。酒田の高校を卒業後、仙台に進学しそのまま就職。震災を機にUターンし、1年後合同会社とびしまを立ち上げる。代表社員として忙しく本土と行き来するかたわら、実家の旅館業も手伝う。

・渡部 陽子(わたなべ・ようこ)さん

飛島出身。高校大学と酒田で過ごし、飛島で働く機会を伺いながら庄内でさまざまな仕事を経験。仕事で島に関わることになり、しまかへの開店スタッフとして念願のUターンを果たす。しまかへ店長を務めながら、島内の旅館で宿泊施設運営の修行中。

・三浦 由人(みうら・なおと)さん

遊佐町出身。高校卒業後、進学のため上京し、学生・社会人として6年間過ごす。帰郷後、調理師の資格を活かし飲食の仕事をしながらも、もんもんとした毎日を送っていたとき、合同会社とびしまの人たちに声をかけられ入社。しまかへの運営全般を担当。

 


 

〈渡部さん〉 高校卒業後、2人はそれぞれ仙台と東京で暮らしていたわけだけど、どうして庄内に帰って来ようと思ったの?

〈本間さん〉 直接のきっかけは、当時働いていた会社が東日本大震災で被災したこと。で、まあちょっと休憩くらいのつもりで、実家の手伝いでもしようかと思って島に帰ってきたんだよね。

〈三浦さん〉 僕は、都会の生活につかれた感じ。憧れて上京したけど、6年間住んでみて、もういいかなって。渡部さんは、都会への憧れってなかったの?

〈渡部さん〉 私はなかったなあ。逆に酒田に出た時点で、外の世界だって感じてた。「なんで1クラスに40人もいるの? 怖い!」って本当に思ったからね。

〈三浦さん〉 島の居心地がよかったということもある?

〈渡部さん〉 あるある。当時から、できることなら島でずっと暮らしたいと思っていたし。

〈本間さん〉 島を出た当時は、人との距離が近いというか、何か目立ったことをすれば次の日にはみんな知っているみたいな環境が、自分は正直嫌だったなあ。でも、今はそれをありがたいと思えるようになったし、仕事をする上でもとても力になっているよね。

〈三浦さん〉 やっぱり、外に出てみてはじめてわかる地元のよさってあると思う。渡部さんはずっと庄内だけど、地元の見え方が変わるきっかけって何かあった?

〈渡部さん〉 大学のゼミ合宿かな。飛島での合宿が恒例になっていたんだけど、外から来たメンバーの方が島のことをいろいろ知っていて。「自分が生まれた場所のこと全然知らないじゃん」って衝撃だったの。私にとっては生活の場でしかなかった島のあれこれが、外の人には魅力に見えるんだって知ってびっくりしたよね。庄内全体に関しても、おもしろい場所だってことに気づけたのは大学のフィールドワークがきっかけで。ずっと庄内にいるけど、外の人の視点を知ることで見え方が変わったっていう意味では、2人と同じかな。

〈本間さん〉 だから、Iターンのメンバーが会社にいることはすごく大事。立ち上げのときからだと、小川さんや松本くんがそうだけど、彼らとの会話の中で気づいた島の魅力っていっぱいあるからね。会社の事業だって、彼らも含めみんなで話し合いながら決めている感じで、もともと自分の中には「このままじゃ島がなくなるぞヤバい」って思いしかなかったしね。

〈渡部さん〉 私もそう言われて育ってきたけど、大人たちが「仕事がないから島には帰って来ない方がいい」と言わざるを得ないっていうのは、やっぱり寂しいよね。「合同会社とびしまに仕事あるから、いつでも帰っておいで」って言えるようになりたい。

〈本間さん〉 そうだよね。「島に帰りたいんだけど」って相談受けたのに、会社に受け入れるだけの体力がなくて断ってしまったことが何度かあって、悔しかったもんなあ。

〈渡部さん〉「20年後には社員60名、いずれは自治体のような存在に」という会社の目標実現のためにも、がんばっていかないとね。最後は、1人ずつ意気込みを語ったりするといい感じに締まるかな?じゃあ、三浦くんから。

〈三浦さん〉 僕は、もっともっと料理の腕を磨いていきたい。レパートリーを増やすことはもちろんだけど、島でとれる食材の新しい調理法とか考えて、しまかへを目当てに島に来てくれる人を増やしていきたいね。

〈渡部さん〉 私は、来年度からスタート予定の宿泊施設の運営をがんばる。そして、伝統とか昔からある島のいいところは残しつつ、島にプラスになることは新しいこともどんどん取り入れて、島を盛り上げていきたいな。

〈本間さん〉 繰り返しになるけど、UターンでもIターンでも、島で暮らしたいと思った人が仕事の心配をしなくて済む環境をつくっていきたいよね。ということで、これからもよろしくね。

 

▼高校生に一言

〈本間さん〉

友人、先輩、知り合い、今あるつながりを大切にしつつ、新しい人ともたくさん出会おう!

〈 渡部さん〉

部活でも勉強でも趣味でも、何でもいいから1つのことを本気で最後までやりきってみよう!

〈 三浦さん〉

社会人とか、自分と違う立場の人と積極的に関わりを持って、たくさん話をしてみてみよう!